第34回 フィニッシングタッチ4 “眼を磨く”
前回はアイテムの選び方によって様々に変化するインテリアの面白さを感じていただきました。
今回は眼を磨くことについて考えてみたいと思います。
インテリアを見る目を養うために一番いいことは、なんといってもたくさんの物やセッティングを見ることです。
インテリア雑誌、インテリアショップ、ショールーム、おしゃれなカフェなどではいいお手本をたくさん見ることができるでしょう。
中でも私のお気に入りはアンティークショップやマーケットです。究極のごちゃまぜ加減が大好きです。思わぬもの同士の組み合わせを発見したり試したりできるのはアンティークショップやマーケットならではですね。(アンティークマーケットの詳しいお話はまたいずれ。)
ただ、やはり本当にインテリア選びがうまくなるには、トライアンドフェイルを繰り返すことが必要だといわれます。どんな金額のものでも、自分で買うことにより、真剣にものを見るその瞬間の積み重ねが、見る眼を養うのです。
まず自分で何か核になるアイテムを購入し、それを使って手持ちのものでアレンジをしてみることです。自分の手で触って、質感や重さ、大きさや風合いを感じて、さらにそれらをさまざまなものと合わせて配置してみることが重要です。
またいずれお話したいテーマでもありますが、フラワーアレンジや植物もこれらと併せて毎日の生活で実践したい事柄です。
また、ショップに行く際には、かならずカラーレファレンス、つまり色見本になるものをお持ちください。合わせたい家具やファブリックの色がわかるものです。ペイントカラーチャートやファブリックそのものでもいいですね。
なぜならば、色はリファレンスなしでは見分けることができないからです。
絶対音感がある人はいますが、絶対色感がある人はいないといわれています。また、色は光の影響を受けて大きく変化します。家の中で見た色の印象と、違う光源や背景色の中で見た色が驚くほど違っていることもあります。
ですから、私は仕事でもプライベートでも、よくペイントカラーチャートやファブリックを持ち歩いています。
もうひとつ、その空間にあるものや空間の写真をパワーポイントなどでコラージュし、プリントアウトしたものを持参することも、モノ選びの際には有効です。
●フィニッシングタッチのお手本
さて、フィニッシングタッチのお手本を示してくれるところはないでしょうか。
ということで、今回は知人のプロから教えてもらい、先日訪ねた青山の私設ギャラリーをご紹介したいと思います。
このギャラリーでは、空間、インテリア、そしてアートディレクション、フィニッシングタッチすべて含んだデザイン展示が行われています。
フィニッシングタッチにもさまざまなスタイルがあると思いますが、私個人が好きなスタイルは、わくわくして、興味深いものがあって、少しルーズで、遊び心があって、こなれた大人感のあるものと言えます。そんな私の好みにもドンピシャで、いるだけでとても幸せになれる空間でした。
ギャラリーは住宅地の一角、住宅そのものをリフォームによって改装した建物です。
オーナーはベテランの建築家 三沢亮一氏。
ランドスケープ、建築、空間、インテリア、フィニッシングタッチ、アートディレクションンを包括的に提案し続ける、この分野での第一人者です。
リフォームにより、アートとインテリアが引き立つ、素晴らしい空間が作られており、まずそこから期待感が高まります。
その空間をオーナーが四半世紀にわたり世界中から集めたアートやアクセサリーが、まさにエクレクティックに彩ります。

季節ごとにテーマを設けた空間展示を行い、その解説やコンサルも行います。
昨年秋にオープンし、大きな宣伝もせず、月に10日間しかオープンしていないにも関わらず、実はプロの世界ではすでにディープなファンベースを持つ、まさに通好みのギャラリーです。
海外のインテリアとその空間の豊かさに触れる機会が多かったオーナーが、“空間における心の豊かさの実現はそのコンテンツの豊かさにある”ことを早くから提唱し、その実践の場を、長年のアートとアクセサリーの蓄積により作り上げました。
私はオーナーと直接お話しをさせていただく機会を得て、そのポリシーと哲学にも共感しました。
この分野を豊かにすることこそが、日本のインテリア空間の豊かさ、ひいてはマーケット自体の発展にもつながる、という考え方も共通するものでした。
空間デザインのプロの皆様、そしてこのコラムの読者の皆様には、ぜひ足を運んでいただきたいギャラリーです。
http://gallery-ryo.jp/
※開館日などの情報を事前にウェブサイトでご確認ください。
●フィニッシングタッチ達人へのてがかり
さて、このコラムでは、今までリビングや寝室空間の映像を中心にお見せしてきましたが、実はバスルームやトイレ、キッチンなども、こまかいアクセサリーを置きやすいので、まずフィニッシングタッチ達人へのきっかけとしてはいい空間です。
何より、サニタリー空間をこぎれいに使う習慣は、インテリアの達人への第一歩だと思います。
結局のところ、たとえば鏡についた水滴やシンクの汚れ、タオルの手触りや香りへの配慮など、身の回りへの日常的な注意力が、インテリア全体に対する基本的な姿勢につながっていくと思うからです。
さて次回は、私が大好きで何度も通いフィニッシングタッチのお手本にしている、イギリス、ケンブリッジにある、ケトルズヤード美術館のご紹介をしてみたいと思います。

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