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ダイナミックなヨーロッパのインテリアシーンは刺激的です。

長い歴史を持つヨーロッパのインテリア業界は、常に活況を呈しています。特に住宅のデザインマーケットは、日本とは比べものにならないほど大きく、また、内容もとても豊かです。老若男女問わず、インテリアへの関心も要求水準も大変に高いのです。
 その中でインテリアデザイナーたちの果たす役割は大きく、セレブと呼ばれる一流のデザイナーたちは、一目で誰のものと分かるデザインで大きなマーケットを牽引しています。
空間のみならず、家具やアクセサリーなどのデザインを次々に発表するインテリアデザイナーやアーキテクトたち。彼らが生み出す千差万別のデザインテイストが、まるで生きもののように成長を続け、トレンドとなってマーケットを席巻していきます。その様子はミラノ、パリ、ロンドンをはじめ、ヨーロッパ各地で毎年数え切れないほど開催されるインテリア見本市で容易に垣間見ることが出来ます。

イギリスの建物にしばしば見られる、
美しい螺旋階段。

写真提供:NSDA

 

インスピレーションの源は、古くて美しい建物と小さな自然。

 ヨーロッパの暮らしは古い建物に囲まれています。私がデザイナーとして扱う建物も、築100年や200年は当たり前です。時代を経た建物は、プロポーションが完成されていて、美しい。何気なく目にする建物や街並みの美しさは、自分の意識や感覚のバランスを保つうえで、とても重要です。仕事でよく訪れる京都の古い家並みを見たとき、また、美しいアンティーク家具を見たときも同じ気持ちになります。多くのデザイナーのインスピレーションの源が、アンティークだったり古い建物だったりすることは、意外と知られていません。時を経て完成された美しさを見続けること、その中から自分のオリジナルを抽出することは、デザイナーとして重要なプロセスだと思います。

 私にはもう一つ、デザインの源になるものがあります。それは、ふるさとの自然です。子ども頃の私は、山や田んぼが四季移ろう景色を眺めるのが何より好きでした。幸いロンドンではリージェンツパークとプリムローズヒルの隣に住み、犬の散歩で毎日、二つの公園を歩きます。犬の目線で地面を眺めたり、芝生に寝転んで空の大きさに包まれたり、四季の花々や木々の移り変わりを楽しんだり。小さな自然ですが、私にとっては宝物です。美しい建物と、小さな自然、その両方が、私にインスピレーションを与えてくれる。ロンドンは、そんな小さな毎日の幸せをくれる町です。

スタジオ近くのRegents Park Road (リージェント・パーク・ロード)の カフェで新聞を読む。

写真提供:NSDA

 
洋の空間にエレガントな和を表現する家具を。その思いをデザインに込めました。
 これまで何千何万とヨーロッパで家具を見てきて、幾度となく不満に思うことがありました。和のエッセンスを持つ空間をつくるときに、しっくり収まる家具が見つからないことです。
 空間や生活は洋が基本になっても、日本人である私はやはり和の空気に包まれていたい。しかし洋の空間にあって、エレガントな和を表現できる家具はなかなか探せません。
 ヨーロッパで日本風の家具というと、往々にして、直線的過ぎたり、素材感が立ちすぎたり、軽すぎたり、逆に重すぎたり。たとえば日本の書や文様の繊細なラインを思わせる家具があっても良いのではないか。その想いが、蓮夕のデザインテーマとなりました。
 「西欧の空間が持つ質量感とプロポーションに沿い、空間の構成要因の一つとして、主張しすぎずに和の華やかさを支え、表現する家具。」そのインスピレーションの源は、書です。
 幼い頃、祖父に教わった書道は、私に一本の線を見極める目を養ってくれました。そのラインは、そのまま蓮夕のラインのベースとなっています。蓮夕のデザインは、伸びやかな書のラインを洋のプロポーションに合わせることにより誕生しました。

スタジオ近くのPrimrose Hill(プリムローズ・ヒル)にて

写真提供:NSDA

 

蓮夕を象徴する二つの家具は、伝統工芸とのコラボレーションによって誕生しました。

 その一つが、1624年創業、京都で400年の伝統を受け継ぐ京唐紙の老舗「唐長」です。その文様の完成度、普遍的なデザイン性、彫りや刷りの技術の高さ、どれをとっても世界の最高峰です。中でも「南蛮七宝」は、黒地に銀の文様が印象的なデザイン。数百年の時を経て、シンプルでありながら、これほどモダンで華やかなデザインを他に知りません。「唐長」を世界の多くの人に知ってもらいたい。そんな思いも込めて、唐紙を美しく表現できるローボードをデザインしました。
 もう一つは、シリーズ名にもなった蓮の花をプリントしたキャビネットです。蓮は、誕生から実りまで、花の輪廻がひと束に共存するといわれる植物。人生にも例えられる普遍性を内包しています。そんなテーマ性のある家具をデザインしたいと、伝統工芸品のプロデューサーである、有井ゆまさんに相談したのがきっかけでした。デザインに合わせ背景には輪島塗の作り手、桐本泰一さんの漆と和紙の表現を配し、蓮との撮影は新進の写真家、成田小夜子さんに依頼しました。漆の深いテクスチャーを背景に、蓮の花が際立つ美しい画像。それを扉塗装の中間行程に、刈谷木材工業独自の繊細な表現加工で描きだしました。このキャビネットには、日本の伝統とテクノロジーが共存しているのです。
蓮夕 ローボード 蓮夕 キャビネット
     
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